北朝鮮への制裁措置の及ぼす効果は?

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民主党の北朝鮮制裁案

(注)産経新聞(参考4)より借用。謝意を表する。

筆者は、先に8月12日と15日の2回にわたり、それぞれ(参考1)と(参考2)の記事で、「拉致解決について不明確と思われるような政府の方針」について記述してきた。
ここでは最近の拉致問題解決に関する動向を述べ、今後の拉致問題解決法などについて 考察する。

8月11日から、中国の瀋陽で行われた日朝の実務者協議で、北朝鮮は、「拉致問題の再調査をする」ことに、8月13日に合意した。その合意内容は、『北朝鮮側は権限を付与された調査委員会を設置し、全面的調査を迅速に行い、可能な限り、今秋までに調査を終了する』というものであった。ところが、9月1日の福田康夫前首相の辞任表明を受け、9月4日夜、中国北京の大使館ルートで北朝鮮から、『日本側の事情をかんがみて、新政権の北朝鮮政策(北朝鮮との合意履行についてどういう考えなのか)を見極めるまで調査委員会の立ち上げを控えたい』 との連絡があった。 8月13日の合意では、北朝鮮が、「日本人拉致問題に関する調査委員会」を立ち上げることの引き換えに、これまで日本が行っている北朝鮮に対する下記の制裁措置を解除することであった。

(a)『北朝鮮当局職員の入国原則禁止』
(b)『在日北朝鮮当局職員が北朝鮮に渡航した場合、原則再入獄禁止』
(c)『日本の国家公務員の北朝鮮渡航原則凍結。一般の渡航も自粛を要請』
(d)『航空チャーター便の往来を不許可』
(e)北朝鮮船舶の入港禁止は、当面継続とする。
(f)『北朝鮮からの輸入禁止』と『ミサイル、核兵器不拡散のための厳格な輸出管理』継続とする。 表現が曖昧である。不明確な表現は先方に乗ずる隙を与える。
(g)よど号事件の関係者6人の引き渡しは、引き続き協議する。 

9月24日、福田内閣が総辞職し、麻生内閣が発足した。その後、10月11日(米国時間)に、米国は北朝鮮に対する「テロ支援国家指定」を解除した。米国に対して、解除を行わないように懸命に要求していた日本政府にとっては少なからぬ衝撃であった。

「テロ支援国家指定」の解除以前に、日本や米国の説得があって、上述したように、北朝鮮は自国内に、「日本人拉致問題に関する調査委員会」を立ち上げることを約束するという経緯があったにもかかわらず、北朝鮮が、は日本の足元を視るかのように、その約束の履行を延期した。これは、麻生新内閣の北朝鮮への制裁緩和を見極めるためであったのではなく、米国の「テロ支援国家指定解除」が近く確実に行われ、その結果、北朝鮮への金融面の制裁が必然的に緩和されることを、予測したからであろう。上記に列挙した項目に見られるように、これまでの日本の北朝鮮に対する制裁項目には、歴然とした金融制裁は含まれていなかったのである。

北朝鮮にとっては、米国による金融面の制裁緩和が行われれば、日本による制裁効果は、総合的に減殺される。この際、北朝鮮にとって政権維持の問題にも触れかねないような 「日本人拉致問題の調査委員会」まで作って、日本の経済制裁に屈することはないと考えたのであろう。

北朝鮮は、もはや麻生内閣の対北朝鮮政策がどうなるかなどは、問題にしていないかのように見えた。にもかかわらず、相変わらず日本を牽制しようとしている。(参考3)によれば、北朝鮮の政府機関紙「民主朝鮮」は、11月11日、麻生太郎首相が、10月24日、25日に北京で開催されたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、日本人拉致問題解決への協力を各国に要請したことに対し「第三者の力を借り、集団的制裁や圧力で解決しようとするのは馬鹿げている」と非難したそうである。

筆者は、この当時の新聞や、ネット記事を調査したところ、麻生首相が中国の胡錦濤主席や、温家宝首相に北朝鮮の日本人拉致問題解決について協力を要請した報道はあったが、それを各国首脳に要請したとの記事は見当たらなかった。ただ2日間の議論を総括した議長声明に、『北朝鮮の核問題解決のための6カ国協議に関連し、早期かつ検証可能な朝鮮半島の非核化』を求め、『北朝鮮の拉致問題については、人道上の懸念への対処という表現で、拉致問題の早期解決』を促している。この声明から、17日目に上記のような北朝鮮の反応があった。

これは次のように解釈できる。これまで北朝鮮は、「日本人拉致問題に関する調査委員会」の立ち上げ延期を、麻生政権の北朝鮮政策が不明確であることを理由にしていたが、彼等は、今回、その勝手な解釈、『今回、麻生内閣の方針が、「第三者の力を借り、集団的制裁や圧力で解決しようとする」方針に変わった』という解釈を新たな理由としてすり替えた。『彼等はこのような新たな理由を盛り込んだ新聞声明によって、「日本人拉致問題に関する調査委員会」を立ち上げることはできない』との応答を行ったと解釈できよう。

このような北朝鮮の反応に先立って、民主党は11月2日、(参考4)、(参考5)に示すような北朝鮮制裁の原案を作成している。前述したように、これまでの、日本の北朝鮮制裁には、金融面での制裁に弱点があったが、この原案は、それを補っているように思える。さらに甚だ遅ればせながら、(参考6)によれば、11月21日、自民党の拉致問題対策特命委員会(古屋圭司委員長)は、拉致問題の解決を目指した「北朝鮮人権法」の改正案をまとめた。拉致被害者の帰国や容疑者の引き渡しがなければ、国際通貨基金(IMF)などから北朝鮮への支援が行われないよう努力する規定を盛り込んだそうである。同じく金融面での北朝鮮への締め付けをより厳しくする法案である。

今まで筆者は、漠然とではあるが、北朝鮮への制裁とは言うが、その制裁の項目や制裁の強さによって、相手に与える効果はどのようなものであるかを、あらかじめよく検討し、最適の効果が得られるように、それら(制裁項目と各項目ごとの制裁の強さ)を決定せねばならないと思っていた。日本政府はこのようなことを十分考慮して対処してもらいたい。この考え方は、数理計画法(線形計画、非線形計画法)として、常識的手法として定着している。工学的手法が政治や外交面に採用されてはならないという考えは打破せねばならない。

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(参考1)拉致解決について不明確な政府の方針 ( 作成日時 : 2008/08/12 02:40 )
(参考2)拉致された人を帰さなければ、実力行使を!!! ( 作成日時 : 2008/08/15 12:05 )
これ以降は無理にお読みいただく必要はありません。主に下記の記事のURLが消滅した後の記事の書庫としての役割を与えた場所です。
(参考3)日本の要請を非難 拉致問題で北朝鮮紙(2008.11.11 13:39)
拉致被害者家族との懇談に臨み、あいさつする麻生太郎首相=首相官邸(酒巻俊介撮影) 北朝鮮の内閣などの機関紙「民主朝鮮」は11日、麻生太郎首相が先に北京で開催されたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、日本人拉致問題解決への協力を各国に要請したことに対し「第三者の力を借り、集団的制裁や圧力で解決しようとするのはばかげている」と非難する論評を掲載した。朝鮮中央通信が伝えた。
 6カ国協議で拉致問題の進展がない限り、北朝鮮へのエネルギー支援参加を留保している日本の姿勢も批判。「何の役割も果たさず、協議進展の障害となっている日本を、朝鮮半島非核化のプロセスから除外せよと要求するほかなくなった」と主張、日本の協議参加資格をあらためて疑問視した。(共同)

(参考4)「日本独自にテロ支援国家指定」 民主党対策本部の北制裁原案が判明 (1/2ページ)(2008.11.2 20:34)
 民主党の拉致問題対策本部(本部長・中井洽元法相)が、北朝鮮による日本人の拉致問題や核・弾道ミサイル問題が一向に進展しない事態を受けてまとめた「追加経済制裁案」の原案が2日、明らかになった。日本独自の「テロ支援国家指定」や在日朝鮮人の再入国禁止、北朝鮮への輸出と送金の全面禁止、国内の北朝鮮関係団体の資産凍結-など北朝鮮に対して厳しい措置を盛り込んでいる。5日の拉致対策本部役員会で協議のうえ正式決定する。
 追加制裁案は中井氏の指示で対策本部の渡辺周事務局長、松原仁副本部長らがまとめた。「ヒト」「モノ」「カネ」「その他」の4分野14項目で構成しており、ほとんどが現行法の運用で実現可能なものになっている。
 特徴的なのは、北朝鮮を日本が独自に「テロ支援国家」として指定するという点。米政府がテロ支援国家指定を解除したことで、北朝鮮が日本を無視する姿勢を強めていることを受け、日本として厳しい姿勢をアピールする。同時に、北朝鮮当局職員の身分を持つ在日朝鮮人に限っている「再入国禁止措置」の対象を大幅に拡大する。

(参考5)「日本独自にテロ支援国家指定」 民主党対策本部の北制裁原案が判明 (2/2ページ)(2008.11.2 20:34)
 また、ミサイルや大量破壊兵器計画に関するケースにのみ実施している金融に関する制裁措置を、(1)北朝鮮および関連金融機関・口座への送金禁止(2)国内金融機関の北朝鮮および関係団体との取引禁止(3)日本国内の北朝鮮および関係団体の資産凍結-などと全面的に規制する。北朝鮮と取引する外国金融機関と日本金融機関との取引も禁止し、北朝鮮を金融面で孤立させるのが狙いだ。
 現行では大量破壊兵器・贅沢(ぜいたく)品に限っている対北輸出についても全面禁止とする。北朝鮮籍船舶だけでなく、北朝鮮がチャーターした船舶も入港禁止とする。
 麻生内閣は10月10日、北朝鮮籍船舶の入港全面禁止など従来実施してきた対北制裁の半年間延長を決めている。だが民主党対策本部は「対話と圧力」に基づく対北交渉を進める上でさらに「圧力」もかけるべき時期だと判断した。
 同本部関係者は「麻生内閣は追加制裁を行うべきだが、われわれの案は、次期衆院選で生まれるであろう民主党政権でも活用できる」と指摘している。

(参考6)拉致進展なければ支援阻止=北朝鮮制裁で自民特命委
 自民党の拉致問題対策特命委員会(古屋圭司委員長)は21日午前の会合で、拉致問題の解決を目指した北朝鮮人権法の改正案をまとめた。拉致被害者の帰国や容疑者の引き渡しがなければ、国際通貨基金(IMF)などから北朝鮮への支援が行われないよう努力する規定を盛り込んだ。
 改正案は、拉致問題を「北朝鮮当局による国家的犯罪行為」とし、その解決に向けて(1)拉致被害者の速やかな帰国(2)真相の究明(3)拉致にかかわった容疑者の引き渡し-が実現されなければならないと明記。明確な進展がない限り、IMFなど国際開発金融機関による北朝鮮支援は容認できないとした。 
 同委はまた、北朝鮮への制裁措置を強化する方針で一致。輸出や送金・金融取引の規制を全面禁止とする方針を打ち出す方向だ。(了)(2008/11/21-12:21)




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