草加市中学・男子生徒・飛び降り事件の処置?

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最近、朝日新聞の朝刊の連載小説『沈黙の町で』が終わった。奥田英朗氏作の400回以上にわたる長編小説であった。この小説は、とある小さな町の中学校のテニス部の中学生の一人が、同じ部の仲間に、部室の隣にある校庭の樹の枝に跳び移るように強制され、それに失敗して、地面に墜落して死亡するという事件であった。なお小説の7月8日の分を(参考1)に示す。

この小説は、この事件を中心として、跳び移りを強制した仲間や、死亡した本人の家族と学校、教育委員会、警察、弁護士、新聞記者などを廻る精神の葛藤を描いたものであった。そして、この小説の背景にあるものは、明らかに気の弱い生徒が、いじめに負けて、不慮の奇禍に遭うという事実であった。

丁度、この小説が終わる頃になって、大津市での中学生の飛び降り自殺事件が、問題になった。この問題の核心は、実は「自殺」と「いじめ」との因果関係にある。にもかかわらず、事件の起きた学校や教育委員会は、極力、生徒の「自殺」と「いじめ」との因果関係の事実をもみ消すか、ひた隠しにしようとする。唯一、大津市長は、この因果関係を認めて、別組織の調査を実施し、事実を明らかにし、犠牲者の親との和解を図ろうとしている。
市長の覚悟は立派であるが、早く決着を図ろうとする様子が透けて見えないでもない。

ところで今朝のNHKの放送『(参考2)』は、
今年の4月、埼玉県草加市の中学校で、2年生の男子生徒が同級生数人から「飛び降りろ。飛び降りないなら金をよこせ」などと強要され、高さ3メートルの校舎から飛び降り、腰の骨を折るなどの大怪我をしていたことが分かった
と報道している。この事件は、明らかに「いじめ」によって生じた人身事故である。死亡には至らず、重傷で済んだのは、不幸中の幸いであったが、当事者の後処理に問題がある。

草加市教育委員会は
「今回のようなことが起こり、被害者の生徒と保護者に申し訳ありません。教育委員会一丸となって再発防止に努めたい」
と話しているそうである。教育委員会は、被害者に謝罪はしている。そして再発防止への努力を約束している。しかし再発の根絶を約束していない。そして飛び降りを”そそのかした”生徒への対処は何も表明していない。ここに重大な手落ちがある。これは、狭い地域社会での先々の付き合い上の支障を恐れた『事なかれ主義』のなせる業(わざ)であろう。しかし悪いことは悪いのである。『いじめは悪いことである』という考えを、少年時代から植えつけておかねばならない。そのためには、いじめ側に回った生徒に、何らかの罰を与えねばならない。

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(参考1)〈小説〉沈黙の町で:417 朝日新聞デジタル 2012年7月8日03時00分http://digital.asahi.com/articles/TKY201207070287.html?ref=comkiji_txt_end
唐仁原教久・画
■奥田英朗・作
 健太は馬鹿馬鹿しくて、関わるのをやめた。今でも名倉には部を辞めてもらいたいと思っている。
 そのとき、名倉が戻ってきた。ペットボトルを下から手渡しすると、自分も屋根に上がってきた。みなで喉(のど)を潤す。
「ちゃま夫、飲んだら飛べよ」藤田が言った。
「ああ飛ぶよ」名倉が突っ張って答えた。
「おいみんな、聞いたな。ちゃま夫が飛ぶってよ。もし飛ばなかったら、あのラケットは永久に部のモニター品だからな」
「なんでだよ。おれのだぞ」
「うるせえ。この前、締結して握手しただろう。おまえな、一回握手したら、それは了解したってことなんだぞ。世界の常識だぞ」
 藤田が無理な理屈を言い立てた。
「名倉、無理すんなよ」瑛介がぼそりと言った。
「そうそう。無理するな。だからラケットはモニター品。ははは」
 藤田は許してやる気がなさそうだ。
 屋根の上には十分ほどいて、降りることにした。気乗りしないが、試験勉強もしないといけない。
 瑛介はてのひらをこすり合わせると、屋根の端まで行き、ひょいと銀杏(いちょう)の木の枝に飛び移った。懸垂逆上がりをして、幹まで移動し、滑り降りた。手慣れたものである。
 金子も続いた。ややぎこちないが、こちらも危なげない。
 健太は木に飛び移らず、柱を伝って外階段に降りることにした。
「健太は飛ばねえのかよ」藤田が聞いた。
「ズボンを汚したくねえんだよ。これ、先月買ったばかりだし」
「じゃあ、おれもやめよかな」
 そのとき、名倉がひとりごとをつぶやき始めた。
「大丈夫、行けるよ」「でもお兄ちゃん……」
 一人二役で何か言っている。

(参考2)“飛び降りろ”埼玉で中学生大けが (7月20日 10時51分) NHKhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20120720/t10013723091000.html
ことし4月、埼玉県草加市の中学校で、2年生の男子生徒が数人の同級生に強要されて校舎の2階から飛び降り、腰の骨などを折る大けがをしていたことが分かり、草加市教育委員会はいじめが原因だったとして、生徒と保護者に謝罪したことを明らかにしました。
草加市の中学校では、ことし4月、2年生の男子生徒が校舎2階の高さ3メートルほどのひさしから飛び降り、腰の骨などを折る大けがをし、学校が調査を進めていました。
その結果、男子生徒は数人の同級生に「飛び降りろ、飛び降りないなら金をよこせ」などと言われ、飛び降りていたことが分かりました。
草加市教育委員会は20日午前に記者会見し、いじめが原因だったとして、大けがをした生徒と保護者に謝罪したことを明らかにしました。
会見で、高木宏幸教育長は「被害者と家族には大変申し訳なく思っている。いじめ問題が拡大することがないよう、学校と教育委員会一丸となって全力で取り組んでいきます」と述べました。
けがをした生徒の親は、このほかにも日常的ないじめがなかったか、さらに調査するよう学校に求めています。
市の教育委員会は「飛び降りを強要したいじめは認識しているが、それ以外は把握していない」として、これまでの調査結果をさらに詳しく説明したいとしています。

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