中国の報道の信憑性と台湾問題の扱い

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台湾は中国ではない

11月17日に、北京でオバマ米大統領と胡錦涛中国国家主席との間で米中首脳会談後の記者会見が行われた。筆者はこの記者会見の詳細な内容を知ろうとして、ネット・サーフィングを行った。しかしその会談内容について報じた記事は見当たらなかった。恐らくこの記者会見から 1週間を過ぎているので、主要新聞のネット記事はすでに消去されたのであろう。しかし仮にあったとしても、中国のものである限り、余り信用できないと思われるので、諦めることにした。

中国の報道機関は政府に報道規制を受けており、仮に受けていないにしても、報道機関自身の曲がった愛国心のために、中国に不都合な問題は避けたがる傾向がある。自国に都合のよい報道だけしか流さないということは、報道全体の信憑性を損なうものである。その信憑性の度合いは、流されなかった報道の量が多ければ多いほど、またその情報が重要であればある程、低下する。現に中国の人権問題や、チベット問題などについては、首脳会談で少しは取り上げられたはずである。しかし報道では殆ど触れていない。台湾問題についても、その例に漏れない。

ただ、我が国では、中国のような報道管制をする必要はない。毎日新聞の19日のネット版が、今回の首脳会談で台湾問題がどのように扱われたかについて、(参考1)に示す内容の報道をしている。それによると、首脳会談後の共同記者会見で、オバマ大統領は、
台湾への防衛支援を義務付ける米国の国内法「台湾関係法」に言及しつつ「中台がさらに連携を進めることを支持する」
と述べたそうである。 「台湾関係法の支持」を主張しながら、「中台の連携の発展の支持」を表明するのは、多分に矛盾に満ちている。しかし台湾関係法を捨てないことの表明は、中国の台湾侵略を牽制することを意味するという見地から極めて重要である。

ただ、これが、米中共同声明の文面の中では、(参考2)に示すように、
中国は台湾問題が主権と領土保全にかかわることを強調し、米側に理解と支持を要請。米国は「一つの中国」政策を実行すると表明し、中台関係の平和的発展を歓迎する。
という表現にトーン・ダウンされてしまっており、台湾関係法への配慮を盛り込むことができなかった。これは極めて遺憾なことである。このように米国が中国に遠慮せざるを得なかった背景には、「米中貿易の極端な不均衡や中国による米国債の保有高が世界一」という現実があることを、今さらながら、痛感させられる。しかしこのようなことで挫けてはならない。我が国は、オバマ大統領が記者会見で述べた米国の思い を支持するように、米国や台湾を側面援助せねばならないと考える。

*****************(終わり)********************


(参考1)米中首脳会談:米中緊密化 「埋没」台湾が危機感
 【台北・大谷麻由美北京で17日に行われた米中首脳会談を受け、オバマ米大統領は胡錦濤・中国国家主席との共同記者会見の際、台湾への防衛支援を義務付ける米国の国内法「台湾関係法」に言及しつつ「中台がさらに連携を進めることを支持する」と述べた。米中首脳会談に合わせて米大統領が同法に触れるのは03年以来。台湾の馬英九総統は同日、「米国が台湾を売り渡す心配をする必要はない」と安堵(あんど)感を示した。一方で、米中関係の緊密化により、米国の台湾への関心が低下するとの危機感が台湾で高まっている。台湾関係法は、「一つの中国」を掲げる中国が「内政干渉」と非難している。オバマ大統領が同法に触れたことで、馬総統は「米台間の相互信頼は既に回復した」と評価し、陳水扁前政権の対中強硬策で亀裂の入った米国との関係改善を強調。また「中台米の三角関係は(中台が分断した)60年来で最高の時を迎えている」と述べた。しかし、米中首脳会談後に発表された共同声明に台湾関係法は含まれなかった。台湾総統府は「理解できる事情だ」と述べ、米国が中国を刺激することを避けたとの見方を示した。
 野党・民進党の蔡英文主席は17日夕、中国が台湾に向けたミサイルを撤去していない状況を指摘したうえで、「米国は台湾関係法に基づき、(売却交渉が難航している)ハイテク兵器を早期に台湾に提供すべきだ」と述べ、台湾への防衛支援を言葉だけではなく行動で示すよう求めた。また、台湾紙「りんご日報」は18日の社説で「米中間で人権と台湾の問題は既に形式的な議題に変化した」と指摘した。

(参考2)米中共同声明詳報 
 米中両政府が17日発表した共同声明の要旨は次の通り。
 一、胡錦濤中国国家主席の招請でオバマ米大統領は2009年11月15日から18日まで中国を公式訪問。両国首脳は深く、率直な会談を行い、豊富な成果があった。双方は米中国交30年来の関係発展を積極的に評価し、新時代の関係発展推進について合意した。
 【米中関係】
 一、両国指導者が密接な往来を保つことが、米中関係の長期的で健全かつ安定した発展に極めて重要との認識で一致。オバマ大統領は胡主席に来年訪米するよう招請し、胡主席も快諾した。両国指導者は引き続き相互訪問や会談、電話、書簡などを通じ意思疎通を図る。
 一、米中戦略・経済対話の重要な役割を高く評価。今年7月にワシントンで行った1回目の対話は豊富な成果を挙げ、来年夏に北京で2回目の対話を行うことで合意。両国外相が毎年相互訪問することにも合意した。
 一、徐才厚中国中央軍事委員会副主席の10月の訪米成果を積極的に評価し、両国軍関係の持続的発展を推進する。来年の陳炳徳中国人民解放軍総参謀長の訪米とゲーツ国防長官らの訪中準備を進め、交流・協力計画を積極的に実行していく。
 一、反テロ協力の強化で合意。刑事事件の捜査や汚職、麻薬取り締まり、不法移民対策などで協力を強めていく。
 一、米国は来年の上海万博開催にあらためて支持を表明した。
 一、米中科学技術協力合同委員会を通じ、交流と協力のレベルをさらに引き上げることに同意した。
 一、透明、対等、互恵の原則で宇宙科学協力について討議し、有人宇宙飛行と宇宙探査分野で対話をスタートさせる。米航空宇宙局(NASA)局長と中国側担当者が来年相互訪問する。
 一、民間航空分野での協力強化で合意。高速鉄道のインフラ設備建設で協力を進める。
 一、新型インフルエンザやエイズなどの対策を含む世界的な公衆衛生分野で協力を深め、食品の安全や製品の品質(保証)で協力を強化する。
 一、各国は発展の道を選ぶ権利を持ち、互いの選択を尊重しなければならない。中国と米国は人権分野で対立があるが、平等と相互尊重の精神に基づき対処し、来年2月末までにワシントンで次回人権対話を行う。
 一、人的交流促進のため、米国はさらに多くの中国人留学生を受け入れ、今後4年間で中国に10万人の留学生を送る。
 【相互信頼強化】
 一、米中は世界の安全と繁栄にかかわる多くの問題に共通の責任を負っており、協調と協力を強め、平和と安定促進に努力しなければならない。
 一、中国は平和的発展の道を歩み、互恵的開放戦略を進めて調和の取れた世界の確立に努力。米国は国際問題で中国がさらに大きな役割を果たすことを歓迎する。
 一、中国は台湾問題が主権と領土保全にかかわることを強調し、米側に理解と支持を要請。米国は「一つの中国」政策を実行すると表明し、中台関係の平和的発展を歓迎する。
 一、両国は宇宙の平和利用推進に共通の利益を持っており、戦略・経済対話や両国間の軍事交流を通じ戦略的に重要な問題を話し合う。
 【経済協力】
 一、世界経済の持続可能でバランスのとれた成長に向けともに努力し、マクロ経済政策で対話と協力を強化していくことを確認した。
 一、20カ国・地域(G20)による金融サミットが国際金融危機への対応で果たした重要な役割を積極的に評価。新興市場国と発展途上国は国際金融機関での発言権を高めなければならない。
 一、中国は内需を拡大し、国内総生産(GDP)に対する個人消費の貢献度を高める。米国は国内貯蓄率を高め、連邦予算の赤字削減に取り組む。
 一、保護貿易主義にともに反対し、建設的、協力的、互恵的な態度で両国間の貿易・投資摩擦を解決する。投資協定交渉を加速する。
  【世界的課題】
 一、地域と世界の安全をめぐり、米中は共通の責任を持つ。米中はアジア太平洋地域に広範な共通の利益を持っており、開放的で互恵的な地域協力の枠組みを整備することを支持する。
 一、核拡散防止条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)の関連規定を順守し、国連安全保障理事会の決議を実行することが核兵器の拡散防止に重要。
 一、北朝鮮核問題で6カ国協議のプロセスを進め、05年9月の共同声明を実行することの重要性を確認。各国と協力し、対話を通じて協議の目標を全面的に実現させたい。中国は米朝間のハイレベルの接触を歓迎。米中とも協議の早期再開を希望する。
 一、イラン核問題の最新の動向を注視。イランはNPTに基づき核エネルギーを平和的に利用する権利を持つが、国際的な義務も負わなければならない。
 一、アフガニスタンとパキスタンのテロ対策を支持し、インドとパキスタンの関係改善を支持する。
 一、核兵器のない世界の最終的な実現に努力し、核拡散防止に向け協力を強めることで合意。来年のNPT再検討会議の成功に努力し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准に努める。
 【気候変動】
 一、気候変動問題は重大な試練。途上国が(自国の)経済、社会の発展を優先させることを尊重しなければならない。
 一、コペンハーゲンでの気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では、「バリ行動計画」に基づく枠組み条約の全面的で持続可能な実行を積極推進することが重要。双方は自国の国情に基づき温室効果ガスの排出抑制に取り組む。
 一、「共通だが差異ある責任」の原則とそれぞれの能力に基づき、COP15では先進国の温室効果ガス削減目標と発展途上国の適切な排出抑制行動が成果に盛り込まれなければならない。
 一、クリーンエネルギー産業は今後数年、両国国民に多くの機会を提供。双方は気候変動、エネルギー、環境で政策対話と実務的協力を進める。
 一、技術協力や政策交流を進め、工業や建設、消費財分野でエネルギー効率を高めることに努力する。
 一、米中間のクリーンエネルギー研究所協力協定署名を歓迎。両国は今後5年間で同研究所に対し、少なくとも1億5千万ドル(約133億円)を投入する。
 一、米中が再生可能エネルギーのパートナーシップを始動させることを歓迎。風力エネルギーや太陽エネルギー、バイオ燃料の利用で協力していく。
 一、原子力の平和利用に向けた世界的な努力を促進していくことで合意した。
 (北京共同)(11月17日20時50分)





台湾問題?中国と米国の軍事的確執
勁草書房
平松 茂雄

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  • 台湾関係法を重視する米国と我が国の対応

    Excerpt: 先に、記事『中国の報道の信憑性と台湾問題の扱い (作成日時 : 2009/11/29 10:22) 東郷幹夫の思いつくまま日記 』でも述べたように、首脳会談後の共同記者会見で、オバマ大統領が、台湾.. Weblog: 東郷 幹夫の思いつくまま日記 racked: 2009-11-30 19:54
  • 台湾関係法に従い武器を売却する米国に賛同する!

    Excerpt: 昨年の11月にオバマ大統領は、中国を訪問し、11月17日に、北京でオバマ米大統領と胡錦涛中国国家主席との間で米中首脳会談後の記者会見が行われた。その時の模様について、筆者の記事 『 中国の報道の信.. Weblog: 東郷 幹夫の思いつくまま日記 racked: 2010-02-02 11:08