オバマ大統領のノーベル平和賞受賞の意味するもの?

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10月9日、米国のオバマ大統領はノーベル平和賞を受賞した。その授賞理由が、(参考1)の朝日新聞のネット記事(参考1)に示してある。その受賞理由を列挙してみると、

①大統領としての立場で、国際政治の中で新たな機運を作り出した
②国連やその他の国際機関の果たし得る役割を主張したおかげで、多国間外交は、中心的な位置を取り戻した
最も困難な国際紛争を解決する手段として、対話と交渉が優先されるようになった
④核なき世界の理念は、軍縮や軍備管理交渉に力強い刺激を与えた
世界が直面する気候変動の挑戦に立ち向かう上で、米国はこれまでより建設的な役割を果たしている
民主主義と人権も強化されるだろう

と褒め称えている。

これは、恐らく今年の年4月6日のプラハでのオバマ大統領による核廃絶の演説が元になっているのであろうと思われる。オバマ大統領の演説は確かに核廃絶への呼びかけを世界に向かって発信した点では画期的なものである。このような呼びかけをしたからには、核保有の超大国である米国が核廃絶への模範的かつ主導的行動を示さねばなるまい。しかし果たしてそのように話は旨く行くであろうか。

米国は最も多くの核を保有しているロシアと核の削減交渉を始めている。具体的にどの程度に進み始めたかは明らかでない。現実に核廃棄の手段、廃棄の検証、廃棄後の核汚染ゼロの確認など、破棄の手段自身、決して容易ではない。①で言うように国際政治の中で、核廃絶の機運は確かに出て来たのかもしれない。しかしその進行状況は定かではない。したがって①のアンダーライン部の根拠は余り定かではない。

②で国連などが息を吹き返したように誇張しているが、それは嘘である。G7、G8、G20、G2などの呼称の下に各種の国際会議が行われてはいるが、それらは何もオバマ大統領の呼びかけによるものではない。したがって②のアンダーライン部の記述の根拠がない。
③のアンダーライン部の主張は、果たしてプラハ演説によって招来されたものなのであろうか。無理なこじ付けのような気がする。
④のアンダーライン部も、②と同様にコジ付けの感が否めない。プラハ演説がそのように急に、軍縮や軍備管理交渉を促進するであろうか。

⑤のアンダーライン部も誇張である。最近になって、米国が急に地球温暖化を防ぐために、意欲的に炭酸ガス放出削減に動き出したということを聞いてはいない。
⑥のアンダーライン部も、取ってつけたような一種のお世辞である。民主主義と人権の強化は世界共通の概念であり、米国の専売特許ではない。

要は、今度のオバマ大統領にたいするノーベル平和賞は、プラハでの核廃絶演説を評価したものであり、その演説によって齎される結果や、その結果に至る途中の経過を評価したものではない。世の中には事をなすに当たって4つの行動形式がある。不言不実行、不言実行、有言不実行及び有言実行の行動形式である。我々、古き良き時代の仲間は「不言実行が最高の美徳で、有言実行はこれに次ぐ」と教えられてきた。しかし国際政治の場ではそうも行くまい。今回のノーベル平和賞の授与は「有言実行」に移ろうとする途中の段階とも云うべき「有言不実行」の段階で授与された。

プラハ演説の成果が実を結ぶことを祈るものであるが、このようなノーベル賞の授与は、オバマ大統領の政策実行の選択肢の範囲を狭めるかのようにも思える。何故なら、核の完全廃止までの間は、核は相変わらず不届き者による相手国侵略の抑止力となり得るからである。その抑止力使用に制限が加えられることは、米国の軍事的威力を減殺することになるのである。

ノーベル平和賞・委員会は、過去にも全く無意味な授与を行ったことがある。2000年に、平壌で韓国大統領・金大中氏は、北朝鮮・総書記の金正日氏と南北首脳会談を実現し、太陽政策による南北和解を演出した。これが同年のノーベル平和賞受賞に繋がった。しかし現在のところ、南北和解は全く実現しておらず、その実現はほとんど不可能視されている。このノーベル平和賞の授与は、完全な失敗例である。 要するに、ノーベル平和賞の受賞者決定委員会には本質的に欠陥があると言わねばならない。結果が現われていないのに結論を急ごうとする。この委員会自身に重大な欠陥があると言わねばならない。

*******************(終わり)*********************


(参考1)オバマ大統領 ノーベル平和賞授賞理由の全文 (2009年10月9日19時22分) 朝日
http://www.asahi.com/international/update/1009/TKY200910090393.html
ノルウェー・ノーベル賞委員会は、09年の平和賞をバラク・オバマ米大統領に授与することを決定した。彼は国際的な外交と諸国の人々の協力を強化することに並はずれた努力をした。委員会はとりわけ、オバマ氏の核なき世界についての理念や取り組みを重視する。
特集:ノーベル賞 オバマ氏プラハ演説などhttp://www.asahi.com/special/nobel/)】
 オバマ氏は、大統領として国際政治の中で新たな機運を作り出した。国連やその他の国際機関が果たすことのできる役割を主張したことで、多国間外交は、中心的な位置を取り戻した。最も困難な国際紛争を解決する手段として、対話と交渉が優先されるようになった。核なき世界の理念は、軍縮や軍備管理交渉に力強い刺激を与えた。オバマ氏の主導のおかげで、世界が直面する気候変動の挑戦に立ち向かう上で、米国はこれまでより建設的な役割を果たしている。民主主義と人権も強化されるだろう。
 オバマ氏ほど、よりよい未来への希望を人々に与え、世界の注目を引きつけた個人はまれだ。オバマ氏の外交は、世界を指導すべき者たちは、世界中の人々の大半が共有する価値や態度を基盤にして導かなければならないという考えに基づいている。
 108年にわたって、委員会はそのような国際的な政策や態度を促進することを目指してきたが、まさに今、オバマ氏がその政策の、世界を率いるスポークスマンになっている。委員会は、オバマ氏が「今こそ、私たち全員が、グローバルな課題に対してグローバルな対応をとる責任を分かち合うべき時だ」と強調していることを支持する。




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