八ツ場(やんば)ダム建設中止に反対する

画像

八ツ場ダム湖面2号橋(仮称) (注)(参考2)より借用。産経新聞に謝意を表する。


1947年(昭和22年)9月のカスリーン台風によって、荒川,利根川など何箇所もの堤防決壊が起き、死者・行方不明者1,930人,負傷者1,547名、住家損壊9,298棟,浸水384,743棟,耕地流失埋没12,927haなどの罹災者は40万人を超える大被害が生じた。八ツ場ダムの建設計画の始まった契機は、このような自然災害にたいする防御対策を立てる必要があった。より詳細は、(参考1)を参照されたい。

その後、住民の反対などによる幾多の紆余曲折を経て、1994年(平成6年)に、ダム建設のための最初の工事として工事用道路の建設が始まっている。既に総事業費4600億円の中で、約7割の3210億円が支出されている。この4600億円の中には、1都5県の支出金・約2000億円(正確には1985億円)が含まれる。そして工事は完成間近かに迫っている。

無駄な土木建設事業を中止するという名の下に、八ツ場ダム工事を中止するのは、これまでの投資事業費3210億円を無駄にすることである。1都5県の貴重な税金を無駄にすることである。民主党は1都5県の国民の税金を「ドブに捨てようとしている」。到底許せるものではない。もし無駄と考える事業を中止するとすれば、もっと初期の段階、計画段階、用地買収段階などのものを対象にすべきではないのだろうか。


マニフェストにどう書いてあったか知らないが、その内容を守るための「生贄」に八ツ場ダム工事中止が挙げられたようなものである。無駄な公共事業を省き、中止することは分かる。しかし、国家の、あるいは地方の永続的公共事業が、政権が変わるたびごとに変更されるのでは堪ったものではない。

さらに民主党は地方自治を重視する政策を掲げているはずである。今回の八ツ場ダム工事の中止宣言は、地方自治の無視であり、侮辱でもある。到底、許されるものではない。もっと言えば、民主党は八ツ場ダムによる治水・利水の効果をどの程度に分析しているのであろうか。民主党はその分析を明らかにしていない。現状通り工事を続けた場合と、中止した場合の効果の比較を詳細に分析し、その理由を国民に納得のゆくように説明せねばならない。

実行できないようなマニフェストを幾つか勝手に作っておきながら、簡単で手のつけやすいところに目をつけ、マニフェストを実行しているという表面上の実績にしたいのではないか。じっくり眺めてみると、民主党のマニフェストには首を傾げるものが多い。怪しげなマニフェストを実行する自信がないものだから、取りあえずは、八ツ場ダム工事の中止を取り上げたような気がする。

前原国交相は勇気をもって、新任早々の16日の「八ツ場ダム工事の中止」の前言を撤回してもらいたい。(参考2)に示すように、地元、群馬県の悲痛な叫びを一体どう捉えているのか。

国交相となる前の前原誠一氏は、民主党の中では唯一つの信頼できる人物と思っていたが、この発言を撤回しない限り、今後は考えを変えねばならない。


*****************(終わり)******************


(参考1)八ッ場(やんば)ダム | 日記 |
Jei : 2009.9.17 | コメント(0) | リンク(0) | 日記 » 一般

 ダムには発電,洪水対策,利水と3つの役割がある。そして,洪水,利水など下流域住民のために,上流域住民が移転を余儀なくされる。そしてダム建設には多大な費用がかかり,本体工事のみならず住民移転,施設移転,道路建設など,関連事業費も膨大なものがあり,それこそざるのごとくに金が出て行く。過去にも建設はしたが,岩盤が弱く,建設したダム湖に水が溜まらず(湖底から水が漏れる),何のためのダムか訳の分からぬものが残っているケースもある(確かざるダムが二つはある)。
 そんな中,民主党は2010年完成予定の八ッ場(やんば)ダムの建設中止を唱えている。当初八ッ場ダム建設に絶対反対をしてきた住民が,歴史の中で賛成に回り,完成直前での中止である。国に翻弄される住民のやり場のない憤りを探る。
八ッ場ダム(やんばダム)は利根川の主要な支流である吾妻川中流部(群馬県吾妻郡長野原町川原湯地先)に建設が進められている多目的ダムである。2010年(平成22年)度の完成予定で,総事業費4,600億円。完成すれば神奈川県を除く関東1都5県の水がめとしては9番目のダムとなる。国土交通省関東地方整備局が事業主体である。
1947年(昭和22年)9月:カスリーン台風(アメリカ統治下で英語名になっている)が関東を襲う。これは風よりも雨による被害が甚大で荒川,利根川など何箇所もの堤防決壊が起きている。この台風による死者は1,077名,行方不明者は853名,負傷者は1,547名。その他,住家損壊9,298棟,水384,743棟,耕地流失埋没12,927haなど,罹災者は40万人を超え,戦後間もない関東地方を中心に甚大な被害をもたらした。
1949年(昭和24年):吾妻川流域の多目的ダム建設計画手掛けられた。
1952年(昭和27年):カスリーン台風級の水害から首都・東京及び利根川流域を守る為にダム計画が発表された。
1953年(昭和28年):町長が国へ反対陳情をする。
1966年(昭和41年):町議会全員一致で反対決議。
1967年(昭和42年):当初計画を変え,現在の地点にダム建設を決定した。だが計画発表以降,水没地域である長野原町において頑強なダム建設反対運動が起きた。反対理由は大きく3つあった。
①全国的に名高い川原湯温泉街をはじめ340世帯が完全に水没する他,名勝で天然記念物でもある吾妻峡の中間部に建設されるのでその半分以上が水没し一挙に観光資源が喪失することが心配された。
②ダムによって地元に還元される固定資産税が水没地を抱える長野原町ではなく,ダム堤の予定地がある下流の吾妻町(現・東吾妻町)に落ちることになる。
③首都圏に住む人々のために水没地に住む住民が犠牲になることには断固反対するという声が地元では多かった。
1974年(昭和49年):ダム建設反対の立場の樋田富治郎が町長に選ばれ,着工のめどはさらに遠のいた。
1980年(昭和55年):群馬県が生活再建案を提示したのを皮切りとして,地元の生活再建策をつぎつぎと打ち出した。これにより受益者である下流部の地方公共団体が負担金を負い,水没地域の人々の生活再建対策事業が可能になる。
1985年(昭和60年):群馬県議会で基本計画案可決。(ここらへんが,意識が変わる変革点か?)
1990年(平成2年):ダム建設賛成の立場の田村守が長野原町長に就任。
1992年(平成4年):ダム建設推進を前提とした協定書が長野原町、群馬県、建設省の間で締結された。
1994年(平成6年):ダム建設のための最初の工事として工事用道路の建設が始まった。
2001年(平成13年):長野原町内のダム事業用地を買収する際の価格を決める補償基準が妥結した。
2005年(平成17年):当初の半数以上の世帯が転出し,住民流出に歯止めがかかっていない。
補償基準妥結時点では地元での移転代替地がまだ完成するまで相当の時間を要する状況にあった。すぐにでも移転したい意向を持つ人々の多くが,移転代替地の完成を待つよりも町内外の他の場所に移住することを選択したのである。また,国が造成する移転代替地を移転住民に分譲する際の価格が,地元の人の多くが期待したほどには安くなかったことも移転代替地以外への移住を促進した面がある。
ダムと吾妻峡、そしてダム関連で整備された温泉街などの各種施設があいまって観光集客力が増すことを期待する人と,逆に川原湯温泉の水没により観光客が減少し,ダム完成後に乗降客の減少により吾妻線が廃止されるのではないかという懸念を示す向きもある。
2004年(平成16年):八ッ場ダム事業は2度目の計画変更を行い事業費が2100億円から4600億円に上昇。事業反対派は建設事業費に基金事業費、起債の利息も含めると総額8800億円になるという試算を示し,文字通り日本のダムの歴史上最も高額なダム計画となったとしている。こうした考え方も論拠の1つとしてダムの恩恵を受けるとされてきた利根川下流の一部住民からは「ムダな公共事業」との批判が起こり2004年(平成16年)11月:関係都県(東京、千葉、埼玉、群馬、茨城、栃木)の各地方裁判所においてそれぞれ公金支出の差し止めを求める住民訴訟が一斉提訴された(ひとつでも勝訴すれば、事実上建設ができなくなる)。ただしこの裁判の原告にはダム予定地に住む住人は1人もいない。
2008年(平成20年)9月:工期を2015年までに延期される。
 地元住民の間ではあきらめと不安の声を示す意見もあるが,これを機として新たな居住予定地の整備計画の具体化を進める動きも加速しており「ダム事業絶対反対」であった昔の状況とは著しい対照をみせている。
 民主党はムダな公共事業として「中止」を公約しており,それに対して住民は「中止撤回」を求めている。9月10日「八ッ場ダム」推進吾妻住民協議会が開かれ,300人を超える地元住民や県議が集まり「ダム中止の撤回」を民主党に求めていく事を確認した。長野原町 高山欣也 町長は「民主党に八ッ場ダム中止を撤回する勇気を持たせるための抗議行動である」と語る。住民にとっては「断腸の思いで判を押した先人の完成する夢を,ここで止めるわけには行かない」という。(続く予定)

(参考2)「何が何でも推進」八ツ場ダムで群馬知事 2009.9.14 15:51 産経
 群馬県の大沢正明知事は14日の定例記者会見で、民主党政権発足を前に本体工事入札が延期された八ツ場ダム(群馬県長野原町)について「何が何でも推進していく。利水治水のため犠牲になった地元を無視するのか」と述べ、早期完成をあらためて求めた。
 大沢知事は「今、反対するならもっと早く判断し、あれだけの人が故郷を離れる前に、やるかやらないか決めるべきだった」と民主党の中止方針を批判。「苦しんできた地元の生活再建を推進したい」と強調した。

この記事へのコメント

2009年09月18日 00:38
埼玉県の上田知事によると、地方負担金の返金+退去住民への生活支援等により工事続行と比べて1000億円以上もの国費が余分にかかるようですね。
つまり、民主党は自己満足のためにそういう税金の「無駄遣い」をしようとするわけで、とても認められない話です。
2009年09月23日 08:55
フフン様
コメントをいただきながら、お返事が遅くなりました。
貴殿のご主張によれば、民主党の主張を押し通すために国費を1000億円も余分に使うそうです。となると、民主党はその理由を国民に説明せねばなりません。
今回の民主党の主張を押し通すとすれば、国家の中期計画は政権が変わるたびごとに変わることになります。これこそ、時間と金の無駄ということになります。
確かに貴殿のご主張のように、民主党は自己満足を達成するために、ごり押ししているように思えます。
通りすがりの僕ちゃん
2009年09月23日 22:36
無駄な公共事業は中止すべき。自民党は、票田を確保するために公共事業を長期に渡らせる手法を取ってきた。こんなことをいつまでもやっていたは、国が破産する。工事は、本体は、まだ未着工。本体まで今の倍以上の税金を投入するとなれば、今、中止するのは当たり前であろう。
初めまして
2009年09月24日 06:41
マニュフェストに掲げて政権をとった以上、日本国民の賛同を得たものだと判断してかまわないと思います

一地域の人たちや知事や市長が、保証金ほしさに声高に文句を言っているのはおかしい。

本当に自分の政治生命をかけてやりたいなら、辞職してこの問題を政策論争にして、選挙をするべきだ。

日本の政治にとって官僚と地方の業界団体の癒着を断ち切るいい機会なのに、そんなことを行っている旧体質の政治家は排除すべr気時が来ている。

民主党支持者ではないけれど
2009年09月24日 07:39
治水、利水の役目を為さないダムを完成させる方が良いのですか?負担金を出した近隣の住民はそれで満足しますか?無駄と判りながら止める事が出来なかった自民党、公明党は正しかったのですか?話し合いに応じない地元住民はダム有りきの生活しか考えられないと言う。民主党には投票してないから変更は許さないと言い張る。国民の税金を使うという事を忘れていませんか?
造り続ける方がお金が掛からないと言って居る人も居るが維持費等も考えない前政権が計算した金額は正しいのですか?無駄と判っているなら中止するのは当たり前ではないですか?治水、利水の役目を果たさないというのは立派な理由では無いですか?マニフェストは勝手に作って良いのでは?民主党のマニフェストを支持したのは国民ですよ!忘れないで下さいね。無策な自民党を支持していたいのなら他党を批判ばかりするのではなく、国民の為に何をすべきかを提案してみては如何ですか?
2009年09月24日 22:18
>東郷幹夫さん
「ブレた」と言われるのが嫌なのか、とりあえず公共事業停止と言えば支持率を維持できると思ってるのかは分かりませんが、仰るとおりですね。
せめて、中止に伴うコスト+代替の治水対策のコストと建設続行のコストを合わせて提示すべきだと思います。

ところで、反論に勝手に反論してしまいますが、このダムの維持費は年間10億弱(8億という説もあり)。
中止に伴って増えるコストを考えると、これだけで130年以上は賄える計算になります。
反対派は工事費が1000億円増える可能性があるといってるんでこれを取り入れても30年以上にはなる。
それと、民主党は代替の治水対策をやるようなので、この分のコストも併せて考える必要があると思います。
公共事業を中止するにしても「マニフェストに書いてあるから」と杓子定規でやるのは、やはりおかしいですよ。
もともと、ダム中止は「税金の節約」が目的だったはずで、ダム中止自体が目的ではなかったはずです。
吾妻渓谷の毎年の通りすがり
2009年10月03日 01:48
中止した方が金がかからない。今まで投資した金はどうするのか。・・・・。どいつもこいつも金、金、金、金。世界的にエコや地球規模の自然保護が叫ばれている時代に、恥ずかしくないのか!
あの見事な渓谷を一度見てください。ここで中止という判断をした方が、またこれを残す方が子孫に対して誇れると思う。

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