ロシア、北方四島支配正当化の本を配布開始

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プーチン首相の訪日に向け、領土問題でロシア側の主張を伝える本(注)

22日の北海道新聞のネット記事(参考1)は、
ロシアは、5月のプーチン首相訪日を前に、自国の北方領土の領有を正当化する世論を喚起し、領土問題に関するロシア側の主張を国内に広めるために、ロシア外務省作成の5千部の本を、サハリン州政府などが配布し始めている。
この本では、北方四島を実効支配している根拠を、第2次世界大戦での日本の侵略行為に対する「罰」と説明し、強硬な論理を繰り返している。 旧ソ連も参加し、領土不拡大の原則を定めた「大西洋憲章」も掲載しているが、旧ソ連の四島支配は、その「例外」と主張している。またこの本の日本語版の書名は「日本はサンフランシスコ講和条約で千島群島か千島列島のどちらを放棄したのか?」となっている
ことを報じている。これについて筆者の見解を述べる。

①ロシア外務省の意図は?
このような本を発行して、ロシア側は何を企図しているのか。5月に来日するプーチン首相が勝手に日本に譲歩するのを防ぐための予防線なのであろうか。あるいはロシア国内の世論を盛り上げ、それを日本に見せつけて、プーチン首相の日本への返答の裏ずけ にしようとしているのであろうか。その真意のよく分からない行為である。

②北方四島実効支配の根拠が無意味!!
北方四島実効支配の理由を、第2次世界大戦での日本の侵略行為に対する「罰」だとしているそうである。しかし日本は第2次世界大戦で旧ソ連の領土を侵略したことは一度もない。むしろ旧ソ連は、終戦間近かになって、日本の戦力が弱まった頃を見計らって満洲国に侵入し、日本人を殺戮し、婦女子を強姦した。さらには満州や北朝鮮に駐留した日本軍兵士を日本に帰還させず、抑留し強制労働に就かせて多数の兵士を死に至らしめた。全く筋違いの言い分である。むしろ日本がポッダム宣言受け入れた後であるにもかかわらず、旧ソ連は、その直後に千島列島を侵犯し、北方四島も占領してしまった。日本に罰を与えるためだったという言い方は、終戦当時であったとしても、許されない。ましてや、戦後64年も経った現在、常識を超える主張である。
③北方四島支配は、何故「大西洋憲章」の精神から除外されるのか?
 ロシアによる北方四島支配は、領土不拡大の原則を定めた「大西洋憲章」(参考2)の精神に反する。ロシアだけ、何故、この精神から除外されるのか?全く意味をなさない。しかも北方四島は、日露戦争の結果、日本への割譲が決まった南樺太や千島列島とは異なる。日本固有の領土である。ロシアへの割譲の対象にはならない。しかもサンフランシスコ条約で北方四島を放棄するという条項はどこにも入っていない。
大西洋憲章の『関係国民ノ自由ニ表明セル希望ト一致セザル領土的変更ノ行ハルルコトヲ欲セズ 』という条項は、何処へ行ってしまったのか。

④日本を侮辱する日本語版の書名!!
『日本はサンフランシスコ講和条約で千島群島か千島列島のどちらを放棄したのか?』とは日本を侮辱するのも甚だしい。彼らは千島群島とは北方四島と千島列島を意味していると思われるが、今さら言うまでもなく、放棄を宣言したのは千島列島である。そして千島列島は旧ソ連の所有だとは認めてもいない。南樺太についても同様である。
にもかかわらず、ロシアは南樺太も千島列島も自国領土とし、さらに北方四島までも占領し続けている。


本当は北方四島問題は国際司法裁判所に提訴すべき問題であり、サンフランシスコ条約の最主要締結国の米国も黙っているのは奇妙である。いかにロシアがこの条約の調印国になっていないとは言え、国際正義を標榜する米国が黙っているのもおかしい。
ロシアという国の非道さは、いずれは後世の歴史家によって問われねばならない。我々は決してこのことを忘れてはならない。後を継ぐ日本国民にこの思いは語り継がねばならない。


*******************(終わり)***********************

(参考1)ロシア 四島支配正当化する本 首相訪日控え世論喚起 (北海道新聞 04/22 08:55) プーチン首相の訪日に向け、領土問題でロシア側の主張を伝える本
 【ユジノサハリンスク21日津野慶】ロシアによる北方領土の領有を正当化する、ロシア外務省作成の本を、サハリン州政府などが配布し始めた。五月のプーチン首相訪日を前に、世論を喚起し、領土問題に関するロシア側の主張を広める狙い。北方四島を実効支配している根拠を、第二次世界大戦での日本の侵略行為に対する「罰」と説明するなど、強硬な論理を繰り返している。
 ロシア語版と日本語版(A5判百五十ページ)の計五千部制作され、うち約一千部をサハリン州政府が州内に無料で配るほか、ロシア側機関を通じて、日本の関係者らにも配布する。
 北方領土の帰属に関して、一九五一年のサンフランシスコ平和条約で日本が放棄した千島列島については、日本の主張と異なり「北方四島も含まれる」との論理を展開。「日本は侵略者」で、その「罰として日本の領土が制限された」と自国の行動を正当化した。
 旧ソ連も参加し、領土不拡大の原則を定めた「大西洋憲章」も掲載。ただし、旧ソ連の四島支配は、その「例外」と主張している。邦題は「日本はサンフランシスコ講和条約で千島群島か千島列島のどちらを放棄したのでしょうか?」。
日本で出版された「ロシアへの反論」(二〇〇七年、安全保障問題研究会編)への回答と説明している。

(参考2)Navigator of the Historical term 大西洋憲章 (英米共同宣言 1941)
昭和16(1941)年8月14日、米国大統領フランクリン=ローズヴェルトと大英帝国首相ウィンストン=チャーチルの大西洋上会談の結果、発表された共同宣言。領土不拡大・政治形態選択の自由・公海の自由・武力行使の放棄・侵略国の武装解除等、第二次世界大戦及び戦後世界の指導原則を明らかにしたものとされているが、その後の行動や発言、内容の吟味をしてみると、欧米列強の「本音」(エゴイズム)が浮かび上がってくる。
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大西洋憲章
(和訳原文)
(1941年8月14日に連合王国総理大臣及びアメリカ合衆国大統領が発表した大西洋憲章として知られる原則宣言)
1941年8月 大西洋上で署名
1941年8月14日発表
「アメリカ」合衆国大統領及ビ連合王国ニ於ケル皇帝陛下ノ政府ヲ代表スル「チァーチル」総理大臣ハ、会合ヲ為シタル後両国ガ世界ノ為一層良キ将来ヲ求メントスル其ノ希望ノ基礎ヲ成ス両国国策ノ共通原則ヲ公ニスルヲ以テ正シト思考スルモノナリ
---------------------------------------------
両国ハ、領土的其ノ他ノ増大ヲ求メズ
両国ハ、関係国民ノ自由ニ表明セル希望ト一致セザル領土的変更ノ行ハルルコトヲ欲セズ
両国ハ、一切ノ国民ガ其ノ下ニ生活セントスル政体ヲ選択スルノ権利ヲ尊重ス。両国ハ、主権及自治ヲ強奪セラレタル者ニ主権及自治ガ返還セラルルコトヲ希望ス
(以下省略)

(参考3)Navigator of the Historical term カイロ宣言 (カイロ公報 1943)
「ポツダム宣言」のたたき台とされる「カイロ宣言」なる公文書はこの世に存在してはいない。「カイロ宣言」は、署名のなされなかった草案 ── 「カイロ公報」を指しており、国際法上、何らの拘束力も持ち得てはいない。又、草案に謳(うた)われている太平洋島嶼(南洋群島)・台湾及び澎湖島等の日本領土については、奪取・占領・盗取した事実はなく、明らかな事実誤認かつ歴史歪曲である。従って、「カイロ宣言」に依拠する「ポツダム宣言」も不完全、特に第8条「カイロ宣言の条項は履行する」は空文であり、日本が履行する義務は無いと言える。
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<略>
---------------------------------------------
カイロ」公報
(和訳原文)
<略>
(現代文)
 ローズヴェルト大統領、蒋介石大元帥及びチャーチル総理大臣は、各自の軍事及び外交顧問と共に、北アフリカにおいて会議を終了し、次の一般的声明を発した。
「各軍事使節は、日本国に対する将来の軍事行動を協定した。
 三大同盟国は、海路、陸路及び空路により、その野蛮な敵国に対し仮借ない弾圧を加える決意を表明した。右の弾圧はすでに増大しつつある。
 三大同盟国は、日本国の侵略を制止しかつこれを罰するため、今次の戦争を行っている。
 右の同盟国は、自国のために何らの利得をも欲求するものではない。また、領土拡張の何らの念をも有するものではない。
 右の同盟国の目的は、日本国より、1914年の第一次世界大戦の開始以後において日本国が奪取し、又は占領した太平洋における一切の島嶼を剥奪すること、並びに満州、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人より盗取した一切の地域を中華民国に返還することにある。
 日本国は、また、暴力及び貧欲により日本国が略取した他の一切の地域から駆逐される。
 前記の三大国は、朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、やがて朝鮮を自由かつ独立のものとする決意を有する。

 右の目的によって、右の三同盟国は、同盟諸国中、日本国と交戦中の諸国と協調し、日本国の無条件降伏をもたらすのに必要な重大かつ長期の行動を続行する。」

(参考4) 「ポツダム」共同宣言(米、英、支三國宣言) 昭和20(1945)年7月26日 ポツダム(Potsdam,Germany)で署名、昭和20(1945)年8月14日 日本受諾
<略>
現代語訳
1.われら合衆国大統領、中華民国政府主席及びグレート・ブリテン国総理大臣は、われらの数億の国民を代表して協議の上、日本国に対して、今次の戦争を終結する機会を与えることで意見が一致した。
2.合衆国、英帝国及び中華民国の巨大な陸、海、空軍は、西方より自国の陸軍及び空軍による数倍の増強を受け、日本国に対し最後的打撃を加える態勢を整えた。この軍事力は、日本国が抵抗を終止するまで、日本国に対し戦争を遂行しているすべての連合国の決意により支持され、かつ鼓舞されているものである。
<略>
6.われらは、無責任な軍国主義が世界より駆逐されるまでは、平和、安全及に正義の新秩序が生じえないことを主張することによって、日本国国民を欺瞞し、これによって世界征服をしようとした過誤を犯した者の権力及び勢力は、永久に除去されなければならない。
7.このような新秩序が建設され、かつ日本国の戦争遂行能力が破砕されたという確証があるまでは、連合国の指定する日本国領域内の諸地点は、われらがここに指示する基本的目的の達成を確保するため、占領される。
8.カイロ宣言の条項は履行され、また、日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並びにわれらが決定する諸小島に局限される。 9.日本国軍隊は、完全に武装を解除された後、各自の家庭に復帰し、平和的かつ生産的な生活を営む機会を与えられる。
10.われらは、日本人を民族として奴隷化しようとし又は国民として滅亡させようとする意図を有するものではないが、われらの俘虜を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰を加える。日本国政府は、日本国国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去しなければならない。言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は、確立されなければならない。
11.日本国は、その経済を支持し、かつ公正な実物賠償の取立を可能にするような産業を維持することを許される。ただし、日本国が戦争のために再軍備をすることができるような産業は、この限りではない。この目的のため、原料の入手(その支配とはこれを区別する。)は許可される。日本国は、将来、世界貿易関係への参加を許される。
12.前記の諸目的が達成され、かつ日本国国民が自由に表明する意思に従って平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立されたときには、連合国の占領軍は、直ちに日本国より撤収する。
13.われらは、日本国政府が直ちに全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、かつこの行動における同政府の誠意について適当かつ充分な保障を提供することを同政府に対し要求する。これ以外の日本国の選択には、迅速かつ完全な壊滅があるだけである。




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