北朝鮮「テロ支援国家指定」解除への日米のせめぎ合い

画像

拉致被害者家族会

この記事は、テロ支援国家指定解除にからむ最近の日米朝の動き (作成日時 : 2008/06/19 16:46)米国、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除か? (作成日時 : 2008/06/20 06:06) 「テロ支援国家指定解除」ライス爆弾声明への反応 (作成日時 : 2008/06/20 10:34)北朝鮮制裁解除に係わる6月20日の高村発言(作成日時 : 2008/06/21 07:28)および昨日(23日)の記事 米国が北朝鮮との和解を急ぐ真の理由 (作成日時 : 2008/06/23 12:08 ) などの続編である。

何はともあれ、驚かされたのは、6月18日のライス国務長官の爆弾宣言、「北朝鮮は近々、中国に核計画の申告を行う。その後、ブッシュ大統領は議会に対し、北朝鮮のテロ支援国家指定解除を通告する」である。議会へのこの通告後、45日経てば、支援国家の指定解除は自動的に成立することになる。

この発言を受けて、6月19日に、斎木昭隆外務省アジア大洋州局長とヒル米国務次官補との間で激論が交わされた。斎木氏は「日本国内の反響の大きさを認識してほしい」と指摘。さらに「日米の信頼関係にかかわる問題だ」と詰め寄り、拉致問題が進展しない限り指定解除しないよう求めた。しかしヒル国務次官補からは明確な返答は得られなかった。表面上だけでも、北朝鮮の非核化を急ぎたい米側と、拉致問題が置き去りにされることを恐れる日本側の溝の深さが鮮明となった。この件については(参考3)を参照されたい。

高村正彦外相は6月20日午前の記者会見で、上記のライス国務長官の発言について、「米国の立場は、解除の際には拉致問題を含む日朝関係の進展ぶりも考慮に入れ、日本政府と密接な連携を取っていくことで一貫している」と述べているが、これも一方的な思い込みで、高村外相の希望的観測あって、信頼性に乏しいと思われる。この件については(参考1)を参照されたい。同日の午後、福田康夫首相は、首相官邸でシーファー駐日米大使と会談し、北朝鮮のテロ支援国指定解除に際し、日本人拉致問題に関する北朝鮮の具体的な対応を十分考慮するように要請した。 この件については(参考2)を参照されたい。

このような差し迫った状態で、北朝鮮は23日、26日に核計画の申告書を提出するとの見通しを米政府に示した。
この申告書の提出と同時に、26日にブッシュ大統領は議会に対し、北朝鮮のテロ支援国家指定解除を通告することになる。この申告には、前の記事でも述べたが、現有の核兵器は含まれておらず、日本の要望とはかなり異なったハードルの低いものとなるようである。しかも核査察には日本を入れようとしない。米国は北朝鮮に核放棄を要求しながら、実は自分でハードルを下げて、審査基準を甘くし、結果的には北朝鮮に核保有を許す結果になる可能性が強い。これは外務省の某幹部の予測でもある。この兼官しては、(参考4)を参照されたい。

残る手段は、今月27日に、京都で行なわれる日米外相会議に望みがかかっているようである。高村外相は、ライス国務長官に、テロ支援国家指定解除の条件として、日本人拉致問題の解決をも考慮するように懇望するであろうが、果たしてどうなるのであろうか。この件に関しては、(参考5)と(参考6)を参照されたい。

しかしテロ支援国家指定も対敵国通商法による制裁も、どちらも米国の国内法である。米国にしてみれば、日本に米国の法律を利用される根拠は何もないと考えるかもしれない。米国の現政権の業績稼ぎを重視するか、同盟国の窮状を重視するかによって判断が分かれる。米国のブッシュ政権は所謂、点数稼ぎに焦っているようである。しかし一時的には業績を挙げたように見える外見的な成果は真の成果ではない。北朝鮮と早く和解し、北朝鮮の北方地域の共同開発に参加して産業面での利権を得ようと言うような目先の利益のみに拘って、大事な人権問題を無視すると、後で問題の解決をもっと難しくすることになろう。この辺をどのように解決するかがが、指導者としての資質が問われるところである。ブッシュ大統領の後世の評価は単なる一時的な業績のみでは定まらない。

*****************終わり*******************

以下はお読みいただかなくても結構です。
(参考1)2008/06/20-12:01 テロ指定解除「米の立場不変」=拉致解決に活用-高村外相
 高村正彦外相は20日午前の記者会見で、北朝鮮が核申告すればテロ支援国指定解除の手続きに入るとしたライス米国務長官の発言に関し「米国の立場は、解除の際には拉致問題を含む日朝関係の進展ぶりも考慮に入れ、日本政府と密接な連携を取っていくことで一貫している。変わったわけではない」と述べた。
 また、高村氏は「日本は同盟国として、拉致を含む日朝関係の進展についても(指定解除を)カードとして使わせてもらう立場だ。もっと使えるのではないか」と述べ、指定解除は時期尚早との認識を強調。来週、京都市で予定される日米外相会談でもこうした立場を伝える考えを示した。
(参考2)2008/06/20-18:12 テロ指定解除、「拉致」考慮を=福田首相が米大使に要請
 福田康夫首相は20日午後、首相官邸でシーファー駐日米大使と会談した。首相は米国が検討している北朝鮮のテロ支援国指定解除に関し「拉致問題は日本にとって重要だ」と述べ、拉致問題での北朝鮮の具体的な対応を見ながら慎重に判断するよう要請した。
(参考3)2008/06/20-18:40 日米首席が激論=テロ指定解除で「深い溝」-対北朝鮮  北朝鮮のテロ支援国指定解除の方針を表明したライス米国務長官発言をめぐり、19日に会談した斎木昭隆外務省アジア大洋州局長とヒル米国務次官補が激論を交わしていたことが20日、分かった。ブッシュ大統領の任期切れをにらみ、非核化の進展を急ぎたい米側と、拉致問題が置き去りにされることを懸念する日本側の溝の深さが鮮明となった形だ。
 同日の自民党外交調査会で、斎木氏本人が明らかにした。それによると、同氏は会談で、ライス発言を一面で報じた日本の夕刊各紙を見せながら「反響の大きさを認識してほしい」と指摘。さらに「日米の信頼関係にかかわる問題だ」と詰め寄り、拉致問題が進展しない限り指定解除しないよう求めた。
(参考4)2008/06/24-01:16 核申告の内容見極め=北のテロ指定解除、慎重対応を-日本  外務省幹部は23日深夜、北朝鮮が26日に核計画の申告書を提出するとの見通しを米政府が示したことに関して「(申告の)内容をまず見極める必要がある」としながらも、日本側が求めてきた核兵器情報については「盛り込まれていない可能性が高い」との見方を示した。
 同幹部は、北朝鮮の申告について「核問題で実績を作りたい米政権がハードルを下げた結果、十分なものが出てくる保証はない」と指摘した。
 申告の見返り措置として米側が踏み切る方針のテロ支援国指定解除の手続きについて、政府は27日に京都市で予定される日米外相会談などで、拉致問題が進展しない限り解除しないよう改めて求める考え。日本側は拉致問題が置き去りにされることを強く懸念しており、政府筋は「引き続き、再調査で北朝鮮に誠実な対応を迫る」と語った。
(参考5)2008/06/24-07:12 拉致問題、棚上げしない=北朝鮮に働き掛け継続-米国務長官
 【ワシントン23日時事】ライス米国務長官は23日、「米国は日本人拉致問題を棚上げしたり、忘れたりしない」と述べ、北朝鮮に対して、問題解決に向けて取り組むよう引き続き働き掛けていく意向を表明した。ベルリンに向かう機中で記者団に語った内容を国務省が公表した。
 同時に、北朝鮮が6カ国協議の合意で定められた核計画の申告書を提出すれば、テロ支援国指定の解除手続きに入る方針を確認した。
(参考6)外相 判断は拉致問題見極めて6月24日13時33分 
高村外務大臣は、アメリカが北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除の手続きに入った場合、今週行われる日米外相会談でライス国務長官に対し、拉致問題の進展状況も見極めたうえで今後の判断をするよう、求める考えを示しました。
北朝鮮の核問題をめぐっては、核開発計画の申告が今月26日に行われる見通しで、これを受けて、アメリカが速やかに北朝鮮に対するテロ支援国家の指定解除の手続きに入るという見方が強まっています。これについて、高村大臣は閣議のあとの記者会見で、アメリカが指定解除の手続きに入った場合の日本政府の対応について「われわれの立場は、日米で緊密に協議を行い、できるだけアメリカの協力を得て、拉致問題を進めていくということに尽きる。『拉致問題や核問題について十分なことがない場合には引き返してほしい』と、アメリカのライス国務長官には申し上げたい」と述べ、今週27日に京都で行われる日米外相会談では、拉致問題の進展状況も見極めたうえで今後の判断をするよう、ライス国務長官に求める考えを示しました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • イランの核に協力する中国・ロシアと中東核戦争の想定

    Excerpt:  ||| イスラエル・イラン中東核戦争の想定 ||| 核保有体勢を固めるイランと米、EU、国連、IAEAの対応策の失敗 ロシア・中国の協力体制と イラン攻撃の結果起きる中東戦争の想定 2.. Weblog: 米流時評 racked: 2008-06-25 07:49