久間防衛相の「原爆投下、しょうがない」発言の効果

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原爆投下後の広島市

久間防衛相の6月30日の「原爆投下、しょうがない」発言に対し、非難の波紋が広がっている。今日の7月2日の安部対小沢党首討論会でも、この問題が採り上げられ、小沢党首は「米国の広島・長崎への原爆投下について米国に抗議すべきである」と主張し、安部首相は、「米国と北朝鮮問題などで協調を強めねばならない時期に、米国を刺激するようなことはする積もりはない」と言明した。

筆者は、最初、久間防衛相の発言については、同氏を中心とする安部内閣の高等戦術であるかもしれないと受け止めた。これは次のような理由による。

日本の防衛相の発言ともなれば、国内だけでなく、当然外国も注目する。原爆投下容認発言は、日本国内からは、明らかに激しい非難を受けることは予測される。一方、米国の政府当事者や議会関係者はどう受け止めるだろうか。彼等が良識のある人間であれば、原爆投下容認の発言の前提に、原爆投下是非に関する日本国内の鬱然とした怒りと激しい葛藤があることを見抜けないはずはあるまい。久間氏発言は、日本国内よりも米国向けの安部内閣の一種のシグナルであったと受け止めた。

折しも、米国では下院の外交委員会で、「日本の慰安婦問題に対する非難」決議案が32対2の大差で可決され、反対者は共和党議員だった。そして7月には下院全体で同案が可決する見通しが強くなっている。

筆者は常々、米国下院は、中韓の金礫を厭わぬ激烈なロビー活動に屈して、慰安婦問題を余りにも誇張して受け取り、人権問題として日本を非難することに余りにも熱心であること、さらには、日本人の北朝鮮による拉致問題で日本が北朝鮮を非難せねばならない重要な時期に、しかも同盟国として米国もそれに協調せねばならない時期に、このような決議案を可決しようとしていることに疑問を感じていた。

さらに、筆者がこのブログ上で何回も指摘しているように、『米国は、人権侵害が極めて不確実であると思われる慰安婦問題で日本を責め立てているが、それでは、一挙に25万人の生命を奪った広島・長崎への原爆投下、10万人の生命を一挙に奪った東京大空襲は、人権侵害ではないと言えるのであろうか。』 米国は人道を無視した人権侵害を日本に犯しておきながら、いまだかつて一言半句の謝罪もしていない。

要するに、日本に対して重大な人権侵害を犯した米国が、逆にその人権侵害とは比較にならないような不確実な問題で、しかもアジア女性基金まで設立して謝罪を続けて来た日本に、まだ謝罪せよと言うのかという思いがあった。そして謝罪せねばならないのは米国ではないかという思いがあった。

筆者は、今回の久間防衛相の発言は、このようなことを考慮し、米国下院に反省の思いを喚起させ、米下院に、7月の慰安婦問題の非難決議を廃案にさせようとする高等戦術かと思っていた。

事実、久間防衛相は、発言の中で、『米国を恨むつもりはないが、勝ち戦ということが分かっていながら、原爆まで使う必要があったのか、という思いは今でもしている』と言及している。これは、米国に対する非難である。この辺が、久間氏の発言を高等戦術と受けとった根拠である。

ただ、久間氏自身が長崎で原爆の被害を受けながら、『(ソ蓮参戦という)国際情勢とか(北海道がソ連に占領されかねなかった)戦後の占領状態などからいくと、そういうこと(すなわち原爆投下)も選択肢としてはありえたのかな。そういうことも我々は十分、頭に入れながら考えなくてはいけないと思った』と言っている。

この辺の発言が、小沢民主党代表や与党内、野党内から激しい批判を受けている原因になっているのではないか。要は

【米国の原爆投下を肯定するのは怪しからぬ】

と言って久間防衛相を激しく非難している。参院選を前にして、野党が与党を非難するネタになっているのであるが、与党内からも非難が相次いでいる。メデイアも大騒ぎである。蜂の巣をつついちょうな原爆投下肯定非難は米国にはどのように映っているのだろうか。

安部首相は『久間氏を叱りおく』程度でけりを付け、久間氏は『前言を修正する』程度で収まった。ここへ来て、今回の騒動は、安部内閣の高等戦術ではなく、久間防衛相単独の高等戦術であったことが判明した。

は、【米国の原爆投下を肯定するのは怪しからぬ】 という非難は、そのまま間接的に米国に向けられたものであると考えることも出来る。「久間・安部」戦略ならぬ「久間単独」戦略は、米国下院の決議に対し、どれだけの圧力を与えることが出来るだろうか。

筆者にもそれは分からない。

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この記事へのコメント

2007年07月03日 06:25
TBありがとうございました。
私の云いたいことの記事が正確に書いてあり流石です。その上「久間防衛相の発言は、7月の慰安婦問題の非難決議を廃案にさせようとする高等戦術か」との推察には舌を巻きました。だとすれば「久間・安部」戦略は大したもので私は安倍内閣を見直しますが・・・。
2007年07月03日 14:02
ラベンダー様
コメントを頂き、有難うございました。「久間・安部」戦略は、どうやら穿ちすぎた見方かもしれません。でないとすれば、久間防衛相単独の米国下院の慰安婦問題非難決議を意識しての発言だったかもしれません。さらにそうでもないとすれば、久間防衛相の失言ということになります。もし失言であるとすれば、このような微妙な問題について発言する時には、言葉の端々を楊枝の先でつつくような「あら捜し」をされることを予期し、原稿を読むようにせねばならないと思います。久間氏発言を回って、野党や与党、長崎県議会などで批判が相次いでいますが、それ程までに米国の原子爆弾投下の肯定的発言を非難するのであれば、何故その矛先が米国に向かわないのかが不思議でなりません。民主党の小沢氏や菅氏は盛んに久間氏を攻撃しますが、どうして米国を非難攻撃しないのでしょうか。この辺が不思議です。
なお貴女様の言及された【「久間・安部」戦略は大したもの・・・】については、小生の飛躍し過ぎの感もありますので、記事の修正を検討いたします。
2007年07月03日 16:29
コメントに対する丁寧なお返事を有難うございます。仰るように《米国の原子爆弾投下の肯定的発言を非難するのであれば、何故その矛先が米国に向かわないのかが不思議でなりません》私も不思議に思います。国内でこんなに大騒ぎになるならば与党も野党も米国に謝罪を要求すればいいのにそれが出来ない事に日本の弱腰を歯がゆく感じます。60年も経ってますのに。まだ敗戦国の遠慮というか腰砕けというのかその風情が哀しいですね。
2007年07月03日 18:16
ラベンダー様
コメントを有難うございました。この記事を、その後、修正していましたところ、久間防衛相辞任の発表があり、驚かされました。続いて小池百合子新防衛相の発表がありました。小池氏は首相補佐官として防衛関係を担当しておられたようですから、その面では適任かもしれません。美人で英語に堪能なようですから、米国との間は旨く行くかもしれません。ただし国家戦略というものは、外国語が出来ることや、美人であるという要素は余り必要ではないという側面を持っております。他に人がいないということは、安部総理の気を許せる適任者がいないということであり、安部政権の行き詰まりを感じさせます。参院選の結果次第で、内閣が変わるかもしれませんね。

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